脳信号を活用して痛みを取り除く――。そんな治療法の開発を、大阪大学 国際医工情報センター 臨床神経医工学 寄附研究部門講師の栁澤琢史氏らが進めている。

 切断したり感覚を失ったりした四肢が痛む症状、いわゆる幻肢痛の緩和を目指す取り組みだ。幻肢痛は四肢切断患者の80%以上に表れる。末梢血管障害を引き起こして四肢を切断する糖尿病患者が増えていることから、患者数は増加傾向にあると考えられている。

大阪大学 国際医工情報センター 臨床神経医工学 寄附研究部門講師の栁澤琢史氏
大阪大学 国際医工情報センター 臨床神経医工学 寄附研究部門講師の栁澤琢史氏
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 これまでは主に、薬物療法や体内にデバイスを埋め込んで電気刺激を与える脊髄刺激療法などの治療が行われてきた。しかし、必ずしも全ての患者に効果が見られるわけではなかった。幻肢痛の痛みは種類や程度に個人差がある。より多くの治療法があることで痛みを軽減できる可能性が高まるため、「VR(仮想現実)療法」など新しい治療法が試行錯誤されている(関連記事)。

 栁澤氏らが取り組むのも、こうした新たな治療法である。着目したのは、最近、頭の中で幻肢の動きをコントロールできる人は痛みを感じにくいという研究データが出てきたこと。そこで同氏らは、幻肢をコントロールできるようにする訓練の開発に着手した。